オールイングリッシュなサマーキャンプ

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大学3年生の7月、私は大きな挑戦をしました。
海外で行われたサマーキャンプに参加したのです。
ICC(International Camp on Communication and Computers)というイベントで、日本と海外の視覚障碍者やスタッフが集い、寝食をともにしながらワークショップを行います。
1993年からヨーロッパ各地で行われてきました。
共通言語は英語なので、英語漬けの1週間になります。

2020年から新型インフルエンザが流行し始めていたので、ICCが開催されても参加できないだろうなと思っていたのです。
ところが、その心配は無用で、ワクチンを打ち無事行けることになりました。
行けることになったのは嬉しかったのですが、それまでに越えなければいけない壁がたくさんありました。
特に手続き関係がややこしかったです。
パスポートを取るための書類が複雑だったとか、必要事項を書いて提出する書類がすべて英語で苦労したなど、本当にいろいろありました。

オーストリアのウィーンで開催され、日本との時差はマイナス8時間、「音楽の都」とも言われている場所です。
飛行機に11時間60分乗ったのも海外に行ったのも初めてだったので、期待より不安が大きかったです。
クラスメートが参加してくれたおかげで飛行機に乗っている間、話をして気を紛らわすことができたし不安も和らいでいきました。
もし一人だったら心細かったと思います。

イギリス、ギリシャ、ハンガリー、フランスなど10か国以上もの国から集まったので100名を超える大所帯でした。
私たちの引率をしてくださった先生も、現地に着けばスタッフの一員となるので、勇気を振り絞って皆の輪に入っていかなければならず大変でした。
人の多さはもちろんのこと、参加者のアクティブな姿、物おじせず英語で会話している姿に圧倒されました。
日本でもっと精神を鍛えておけば良かったと何度思ったことでしょう。
それくらい皆の姿がまぶしかったです。

言いたいことがなかなか英語に訳せなかったのもつらかったです。
頭ではどう言えば良いのかわかっているのに、それがすっと言葉として出てこないつらさとショックで涙が出ました。
サマーキャンプでの1週間を通して少しでも変わりたいと思っていたにも関わらず、全然変われていない自分が腹立たしかったです。
日本に働きにきている人や、留学している人たちもきっともどかしさや苦労をいっぱい抱えているのかもしれません。
「言葉の壁は大きい」と思った瞬間でした。

試練はいろいろありましたが、ワークショップや余暇時間は楽しかったです。
Skypeの使い方を英語で学んだり、お菓子作りをしたりダンスを踊ったりと、とても濃い1週間でした。
朝から夜までスケジュールがぎっしりで、1日が終わる頃にはものすごく疲れていました。
ふと外の物音に耳をすましてみると、夜遅くまで軽快な音楽が流れていてピアノを弾く音が聞こえているではありませんか!
音楽の都と呼ばれているだけに、宿泊する部屋やホール、休憩する部屋などあらゆる所にピアノが置いてあり自由に弾けるようになっていました。
ピアノを弾いている人の所に大勢人が集まってきて歌ったり、体を揺らしていたりする姿を見て、本当に心から音を楽しんでいるなと感じました。

初めての海外でたくさん気を遣ったから、少しは痩せたかなと思っていたのですが、食べ物が美味しすぎて太ってしまいました。
美味しいうえにボリュームもあったのですよね。
授業の合間に休憩時間があってフルーツを食べていたのでそれも太った原因かもしれません。
ブレイクタイムがしっかりあることにも驚いたし、つい1時間ほど前に昼食としてスパゲティーやアップルパイを食べたのに、休憩時間にもフルーツを食べていました。

キャンプが終わりに近づいた頃、街を歩く機会があり、ものすごい音で車が走っていて、路面電車の中が常に騒がしかったです。
電車やバスに乗った時は一緒にいる人に任せるしかなく、乗客の賑やかなおしゃべりで車内放送が聞こえにくいのです。
聞こえたとしてもドイツ語だから意味がわからなかったので、交通機関を利用した時だけはひやひやしていました。

設備面のバリアフリーは日本が進んでいるように感じました。
点字ブロックらしき線はあったのですが、薄すぎて足で触れてもわかりませんでした。
一方、心のバリアフリーについてはとても印象に残りました。
親切な人が多かったです。
言葉の端々から「一緒に行こう、一緒にやってみよう」という雰囲気が伝わってきて安心しました。
「やってあげる」みたいな態度でなかったことが本当に嬉しかったです。
日本では躊躇してしまうことでもヘルプを求めて良いのだと思ったら、心が軽くなりました。

食事も私好みで、毎日の楽しみの一つでした。
ウィーンの食事が自分に合わなかったらどうしようと心配していたので良かったです。
食事の中でパンとハムが好きになりました。
ピクニックに行った時や帰国する時にサンドイッチをもらったのですが、それがとても美味しかったです。
ハムは燻製のような独特な香りがしていましたが、厚切りの食パンとマッチして、また食べたいなと思える味でした。

ICCが始まった時は1日が長いなと思っていたのですが、気づけば帰国まであと1日になっていました。
帰国の前夜に開かれたお別れパーティーは、仲良くなった人と別れることへの寂しさとやっと日本に帰れるという安堵の気持ちが混じっていました。
各国の出し物がどれも面白く、笑いっぱなしで歌やダンスが多かった中、私たちが披露した出し物はけん玉でした。
後で先生から「もう少しレベルの高い英語使えなかったの?」と言われてしまったのですが、出し物を考えるので精いっぱいで気が回りませんでした。
準備の時間が非常に少なかったから、日本の昔話を英語で朗読するか、日本の遊びを披露するしか思いつかなかったのです。

滞在したのは1週間でしたが、1ヶ月に思えるほど盛りだくさんでした。
日本に興味を持っている人と出会い、日本の挨拶を教えたり、食べ物の話ができたりしたのも楽しかったです。
英語だけでなく参加した国の言葉やオーストリアの公用語であるドイツ語も少し頭に入れておけば良かったなと思いました。
お部屋の掃除をしてくれる人や、食堂の人は英語が苦手そうだったからです。
ICCの時は英語に気を取られすぎていたから、もし次にどこかに行く時は現地の言葉も覚えて行きたいなと思いました。

大変だったことがたくさんあったけれど、ICCに参加できたことは私にとって良い経験になりました。
改めて自分の短所を知ることができたからです。
短所を知り、改善していこうと思えただけでも大きな気づきだったかなと感じています。
多額のお金を出して、行かせてくれた両親にも感謝の気持ちでいっぱいです。
それなのに、気の利いたお土産を買ってこられなくてごめんなさい。
必死に悩んで買ったのはチョコレート2種類とスープの素でしたが、スープの素の説明書きがドイツ語だったのです。
「わけがわからないのを買ってきてがっくりした」と今でも時々ネタにされてしまいます。
帰国後の時差ボケがきつく、帰国と同時に期末レポートがたくさん出て、がくっときたけれど一生忘れられない夏の思い出になりました。